在宅時間が長くなるからこそ気をつけなければならない熱中症

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大による外出自粛が求められている現在(2020年4月)、ご自宅で過ごす時間が長くなっていますよね。また、これから暑くなっていく中で注意しなければならないのが『熱中症』です。そこで今回は、在宅時間が長くなるからこそ気をつけなければならない熱中症、という観点で書いていきたいと思います。


【熱中症の現状】

総務省消防庁の発表によると、令和元年(5月から9月)の熱中症による救急搬送人員は71,317人だったとのことです。救急搬送されていない軽傷の方を含めるともう少し増えるかもしれませんね。救急搬送された方をさらに詳しくみていきましょう。

中野 大輝

2019年の発生場所に着目してみると、住居での発生が一番多い(38.6%)という結果に(図1参照)。また、公衆(屋内)でも9%程度の方が熱中症になっています。ただ、敷地内すべての場所を含むということなので、庭仕事も含まれているということに注意が必要です。話は少し脱線しますが、興味深いことに、総務省消防庁熱中症情報(リンクはこちら)で公表されているデータの調査期間が、平成20年・21年は7月〜9月、平成22年〜26年は6月〜9月、平成27年〜令和元年は5月〜9月と、少しずつ早くなっているのですね。
次に、年代別の傷病数に着目してみますと、高齢者(満65歳以上)が一番多く、次に成人(満18歳以上満5歳未満)のが多くなっています。


中野 大輝

【熱中症とは】

熱中症には、暑熱環境にいるだけで熱中症である非労作性(ひろうさせい)熱中症と、暑熱環境下で身体活動が加わることによる熱中症である労作性熱中症に区分されます。「暑い環境」で「身体活動」を実施すると、非労作性熱中症と労作性熱中症のダブルパンチが襲いかかってくる可能性があります。実際に、暑い室内で運動を実施すると熱中症発症のリスクが高くなるという研究もあるのです。このように、「環境」と「身体活動」に着目することが重要なのです。


【熱中症予防のための指標】

暑さ指数(WBGT)は、人体と外気との熱のやりとりに着目した指標であり、労働や運動時の熱中症予防に用いられています。この指標は気温だけではなく、湿度や輻射熱(地面や壁などに当たることによって発生する熱)も反映することから、より熱中症予防のための指標として利用されています。日本各地のWBGTは環境省熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp/)で確認できますので、特に屋外での運動や作業をする時は確認するようにしてください。


【運動時の予防法】

最近、オンラインやテレビなどを用いた遠隔指導法で運動トレーニングを提供するサービスが急増してきました。まだ涼しい時期だとあまり気にしていない方が多いと思いますが、ご自宅で運動トレーニングを実施する方はこれからの時期、しっかりと対策を行うようにしましょう。また、運動トレーニングを提供する方も十分に注意喚起を促すようにしましょう。
では、予防策をみていきましょう。

1.環境省熱中症予防情報サイトでWBGTを確認
 →WBGTが28℃以上の時は厳重警戒もしくは中止を検討しましょう。
 判断基準の詳細はこちら

2.屋内で実施する場合は、あらかじめ涼しいと感じる温度に設定
 →「暑い」「じめっとしてる」と感じる、また「風通りが悪い」「エアコンがない」といった環境で身体を動かすことがないようにしましょう。              

3.水分をこまめに摂取
 →水より市販のスポーツ飲料や経口補水液の方が良いでしょう。

詳しくは環境省熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp/)で確認できます。運動指導者やトレーナーの方々も必見です!

中野 大輝

基本情報

名前 中野 大輝
資格等 博士(スポーツ健康科学)
ご所属 立命館大学
メールアドレス d-nakano@fc.ritsumei.ac.jp
プロフィール 立命館大学専門研究員。
小学校から大学まで陸上競技(100m:自己ベストは10秒61)に没頭した。鹿屋(かのや)体育大学では金久博昭教授の元、誰よりも速く走るために身体について猛勉強していたが、気付けば研究にのめり込むことに。長い距離を走ることを苦手としており、有酸素性エネルギー供給を担っているミトコンドリアが嫌いだったのに、順天堂大学院時代にはミトコンドリアについて研究し、いつの間にか大好きになっていた。また、指導教員である町田修一教授が関わっていたロコモ予防のためのプロジェクトに加わり、体力測定や運動指導、自主活動団体の立ち上げ・発展に貢献した。研究から現場まで幅広く活躍しているオールラウンダー。所属学会は日本体力医学会/日本運動生理学会。

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