「感覚ゴルフ」から「スポーツ科学的ゴルフ」の時代へ Vol.4

【【著者】鈴木タケル(日本プロゴルフ協会会員)、
    一川大輔 (東洋大学 理工学部生体医工学科)
【監修】坂井昭彦(The 蔵ssic)

●テーマ:パッティング技量評価テスト
「USPGAでの1mにおける平均パット数は1.04打 2.5mでは1.50打 9mでは1.98打 あなたの場合は?!」


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前回の編では、パットのカップイン確率について示し、その成功率の事実を大まかに掴んで頂きました。次に、具体的にこのようなデータを活かし上達に繋げていく評価法およびトレーニング法をご紹介していきます。まずは、自身のパッティングの実力をスタート前の練習グリーンなどを使ってテストしてみましょう。USPGAにおけるデータ(表1)では、1mの距離を沈めるのに要する平均パット数は1.04打です。つまり、ほぼ1パットで沈めなければならない距離ということがわかります。パーという概念を採用すれば、1mの距離はPar1ということになります。2.5mでは、1.50打となり2回2.5mを打つ機会があれば、1度は成功しなければなりません。それゆえ2.5mの距離は、Par1.5と考えます。9mでは、1.98打となっていますので、ほぼ2パットで沈めればよい距離ですので、Par2と考えます。この3つの距離を各3回で合計9回実施した場合、USPGA選手の合計パット数は13.5(正確には13.56)打となります。したがって、1m、2.5m、9mを各3回、合計9ホールを行った場合の規定打数を13.5と定義して、それに比べて自身のパット数が多いのか少ないのかを判断します。

表1 PGAツアー選手の1パットの確率とホールアウトまでの平均パット数(文献1より改変)

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具体的な方法として、図1のように練習グリーンなどに3つのホールを設定します。9mの1巡目を1番ホールとし、次いで2.5mを2番ホールとします、その次に1mを3番ホールとし、これを3回繰り返すことで9ホールを行います。条件として9mの長い距離から行うこと、1打ごとに距離を変更して行うことでより実際のコースで起こる場面に近い状況でテストを行います。応用編として、十分なスペースが取れれば、ライン及び傾斜も一打ごとに変更して行うことで更に実践に近い状況でテストすることも可能となります。

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図1 パッティング技量評価テストの設定図

実際のスコアカード記入例を表2に示します。この場合、1回目のテストは、合計18打とPGA平均よりも4.5打もオーバーしています。2回目には、合計15打となり、3回のテストでは、PGA選手の平均近くに到達することができました。このように目標とするパット数値が明確になることで練習に対する意欲向上効果が期待できます。また自身のパット技量上達の指標、パットの調子把握、また、スタート前であればグリーンコンディションの確認や環境適応に効果があると考えられます。

表2 評価テストスコアカード記入例

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なお、このテストでの距離設定は、それほど厳密にする必要はありません。多少距離が前後してもUSPGAのデータに対する大きな差はないと考えられます。なお、1回9ホールのテストを終えるのには約5分程度の時間が必要であり、その際はゴルフ場のスコアカードを利用してスコアを記入してみましょう(資料①)。このスコアカードのように9ホール3セットで合計27ホールを行うと約15分を要します。事前に5分程の自由練習を行ったのちにこのテストを実施しコースラウンドに出るのも良いでしょう。さらに可能であればラウンド後にも同様のパターンで練習を行うことをお薦めします。是非、ご自身のパット技量を高める上でもUSPGA選手の平均値に挑戦してみてください。

資料⓵

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引用文献
(1) マーク・ブローディ(2014) ゴルフデータ革命, プレジデント社, pp54-84

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エビデンスGolf(ジュニア編)