「感覚ゴルフ」から「スポーツ科学的ゴルフ」の時代へ Vol.5

【著者】鈴木タケル(日本プロゴルフ協会会員)、
    一川大輔 (東洋大学 理工学部生体医工学科)
【監修】坂井昭彦(The 蔵ssic)

●テーマ:パッティングパフォーマンスを決定する要因モデル
「パッティングに影響を与える要因の比率を理解し効率のよい練習を!!」


前回までは、パッティングについて実際のコースでの成功率を高める方法について述べてきました。
今回からは、パッティングパフォーマンスを決定する要因について理解を進めていきます。
パッティングパフォーマンスに何が影響しているのかを知るには、カップインすることが最終的な目的と仮定し、その他の要因が及ぼす影響を分析する必要があります。
そしてカップインするために必要な要因や要素を正しく理解することで、どのような練習に時間を割くべきかを探ります。
近年、パッティングに関する世界的研究者の1人であるJon Karlsen (Norway) は、2010年にこれまでに複数発表してきた論文を総説としてまとめ、パッティングパフォーマンスに関する研究結果をインターネット上に公表しています(文献1)。
彼はまずパッティングパフォーマンスを図1のように距離と方向に分化し、さらに細かく分類をしています。
しかもそれは、「心理的要因」「道具」「戦略」にも影響を受けると報告しています。
我々ゴルファーは、複数ある要因のなかで、どの要因がどれくらい重要な比率を占めるのかを理解することで効率よく練習時間を割くための指針を得ることができると考えられます。

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図1 パッティングパフォーマンスを決定する主な要因モデル: 文献(1)p7より引用改変

今回説明する部分は、図1の赤枠部分です。
わかりやすく実際の予測率を加えて改変したものが図2です。
驚くべきことに、Karlsenが行った研究結果では、「グリーンの読み60%」「テクニック34%」「グリーンの凸凹6%」の順で距離の変動性を説明できることを示しています。
しかもこれは大げさな数字ではなく、あくまで少なく見積もってこの比率になることを提言しています。
この検証では、アメリカ、ヨーロッパのツアーをプレーする22人を含む190人のスクラッチプレーヤーを対象とした結果であるので、技術の変動性が少なく信頼性が高く、このグリーンの読みが最も重要であることは非常に参考にすべきところといえます。
またこの事実は、初心者やアベレージゴルファーにとっても重要といえます。
ゴルフパッティングにおいては、完璧なストローク技術を持っていても適切なラインを読むことができなければカップインすることはできません。
対照的に完璧にラインが読めたとしても、適切なラインに打ち出す技術がなくては入りません。
つまり、カップイン率はパッティング技術が高くなればなるほど、グリーンの読みの貢献度が高くなると考えられます。
したがって、必要以上にストローク方法のテクニカル面に固執することよりも、ライン読みに対する練習時間をより割くことが重要といえます。

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図2 グリーン読みにおける相対的重要性: 文献(1)p31より引用改変

以上のことから多くのゴルファーは、グリーンスピード、左右の曲がり、上り下り、更には芝生の種類や芝目の方向、芝生表面の乾燥具合などを含むグリーンの読み(Green reading)が如何に重要なのか理解する必要があります。
しかしながら、グリーンの読みを身につける体系的な指導法はまだ確立されていません。
それゆえコースに出かけた時は、1分でも多く練習グリーンに身を置くようにしましょう。
基礎的な練習を終えたら1球だけを使い、先の項で示したミニコースを設定しゲーム形式で1球ごとにラインを読み、なるべく少ない打数でカップインする練習を積んでください。
Karlsenより前の世代のパッティングの世界的研究者であるPelts氏によれば、プロを含めほとんどのプレーヤーは、ボール後方からのみでの乏しいライン読みだけで、あとは個人の経験と技術に頼ってパッティングしていることを指摘しています(文献2)。
ぜひ、皆様にはゴルフラウンドでグリーンオンしたら、なるべく早く自分のボールに向かい多方向からラインを読む習慣をつけてもらいたいと願っています。

文献
(1)Karlsen, J. (2010). Performance in golf putting. Dissertation from the Norwegian school of sport sciences.
(2)Pelz, D., & Mastroni, N. (2004). Putt Like the Pros: Dave Pelz's Scientific Way to Improving Your Stroke, Reading Greens, and Lowering Your Score: Aurum.

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エビデンスGolf(ジュニア編)