ジュニア(小学校期)編~身体リテラシーの育成 Vol.1
【著者】鈴木タケル(日本プロゴルフ協会会員)、
一川大輔 (東洋大学 理工学部生体医工学科)
【監修】坂井昭彦(The 蔵ssic)
●テーマ:「小学校期の競技成績を全国レベルにまで高める必要はありますか?」
ジュニアゴルフの目的は、試合に勝つだけでなく、「人間形成」も重要なファクター
近年、ゴルフ人口の減少が叫ばれ、次世代の担い手としてジュニアゴルファーの育成が行われています。NPO法人ファーストティプログラム(https://www.thefirstteejapan.org/)に代表されるようなそれらの活動では、ゴルフ競技力の向上よりも、教育的な側面に重きを置いて活動が行われています。ファーストティプログラムでは、
1.人生を豊かにする価値観を育む
2.健全な判断力と健康的な習慣を培う
3.将来の人生に貴重な影響を与える
という3つの目標を掲げ教育プログラムとして取り組んでいます。
一方で、ゴルフに興味を持った小学生ゴルファーは、更なる上達を目指し、競技としてのゴルフに取り組むことで競技力向上が主な目標となり、大会でも上位に入るために一生懸命に努力を積んでいます。
これは、ごく自然なことであり、大会に向けての試行錯誤を行うプロセスや試合結果の受け止め方を学ぶことは、人間形成に大いに役立つ経験を得ることになるでしょう。
しかしながら、日本代表になることやプロで活躍することを目標とするならば、長期的な育成計画を正しく理解すべきであり、小学校期の競技成績にこだわり過ぎる必要はないことを、競技者本人とその保護者、また指導者は理解する必要がありそうです。
スポーツ競技では小学生で試合結果を出した選手がトッププロ選手になるとは限らない
現在でも世界的に活躍するタイガーウッズやローリーマキロイなどのように幼少期から天才少年ゴルファーとして名声を轟かせてきた選手もいます。
しかしながら我々は彼らのような例を一般化し考えてよいものでしょうか?
対照的に小学校期の全国優勝者は、必ずしもプロになって一線で活躍しているとは限らないようです。例外的に小学生からプロまでずっと世界トップクラスで活躍する選手は今後も数名は現れるでしょうが、果たしてその他多くのトップ選手達は子供の頃からトップレベルの選手だったのでしょうか?
そこでゴルフとは少し離れますが、日本陸上競技連盟は、「日本代表選手の陸上競技実施率および競技レベル(表1)」について調査しデータを公表しています。
(※ゴルフ種目 でのデータを挙げたい所ですが、今までこのような調査を行われてこなかったことにも問題があり、今後、調査の必要性はありと考えます)
その結果をみると陸上競技では、将来的に日本代表になった選手であっても小学校期にはわずか16.3%しか陸上競技を実施していませんでした。しかも、その小学校での競技成績を詳細に分析すると、全国大会に出場した選手は3.8%、入賞者に至ってはわずか1.9%となっており、小学校期から成人まで日本代表レベルを持続することは例外中の例外であることが確認されています。この調査からいえる2つの要因は、中学校期には専門とする競技を実施していること(中学校期実施率79.8%)高校期には全国大会出場レベルに達していること(高校期全国大会出場79.8%)であり、この2つ要因は、日本代表レベルに達するための一般的な条件といえそうです。
小学校期はあらゆる運動を行い「※身体リテラシー(身体の賢さ)」を習得
この結果は、あくまで陸上競技での調査ですが、ゴルフにおいても多いに参考になりそうです。小学校期には専門とするゴルフの競技成績にこだわり過ぎず、多様な運動を行うことの重要性は、一部の指導者には少しずつ理解されてきていますが改善の余地がありそうです。次回からは 、小学校期に身につけておきたい、※身体リテラシー(身体の賢さ)を習得する方法などをご紹介していきたいと思います。
参考文献
表1
日本陸上競技連盟公式サイト内
トップアスリートへの道〜タレントトランスファーガイド〜
リーフレットより引用
https://www.jaaf.or.jp/pdf/development/A4_p1.pdf
※身体リテラシーとは
日本陸上競技連盟公式サイト内
競技者育成指針 普及用リーフレットより引用
http://www.jaaf.or.jp/pdf/development/model/Leaflet150dpi.pdf
「さまざまな身体活動やスポーツ活動などを、自信をもって行うことができる基礎的な運動スキルおよび基礎的なスポーツスキルのこと」