ジュニア(小学校期)編~身体リテラシーの育成 Vol.8

【著者】鈴木タケル(日本プロゴルフ協会会員)、
    一川大輔 (東洋大学 理工学部生体医工学科)
【監修】坂井昭彦(The 蔵ssic)

●テーマ:ジュニア期(ユース期)には筋トレ(レジスタンストレーニング)は必要か?
―成長に対する阻害要因はほとんどなく、その取り入れ方を考えよう―


昨今、老若男女に筋力トレーニングの効果(生理学・心理学効果)が認知され、様々なメディアやトレーニング現場でその実践が多く見受けられるようになってきました。一方で、成長期にあるジュニア(海外ではユース)世代がレジスタンストレーニングを行うことに対して、弊害がある(ex.身長が伸びなくなるとか)のではないかと考える指導者や親が多いのも事実でした。その点について今回は考えて行きたいと思います。


まず成長期にあたるユース期の子どもは、Vol. 2でも紹介したように、暦年齢ではなく、生まれた月による年齢(実年齢)を考慮して様々な運動能力を評価する必要があります。また仮に実年齢が同じでも性別や体型は個人によりタイプが大きく異なります。それゆえ、彼らの能力を過大評価することなく、トレーニングの量と負荷を徐々に変えながら実施することが求められます(文献1)。


この時期の子どもは筋と骨形成が著しいが、レジスタンストレーニングを実施している子どもは、より骨密度が高くなる傾向があること、傷害の発生率が低くなること、精神的健康度が高くなり身体活動(日常生活も含む)に対してより前向きになることなどが報告されています(文献2)。それではレジスタンストレーニングを実施する場合の子ども用のガイドラインが示されているので以下を見ていきましょう。


・指導者は子どもたちに正しい使用方法および運動する際の機器や用具の危険性を正しく提供する必要がある
・それぞれのセッションの前には、5-10分程度の動的なウォーミングアップを実施する
・はじめは様々な運動様式を用い、中程度の負荷までで1セット10-15回とする
・目標に応じて、2-3セット行う場合は、6-15回(負荷が高ければ回数を少なく)の範囲で実施する
・負荷は5-10%と徐々に増やすのみとする。
・トレーニングの量を追うのではなく、正しい動作の習得を目指す。
・指導者は新規性があり、やりがいのあるトレーニング内容となるよう心がける。


ここで問題となるのが、子どもたちがレジスタンストレーニングをしている際にどれほど力を発揮しているのか、指導者が客観的にわかりにくいという側面があります。青年期を越えた人であれば、補助者のサポートがあれば全力に近い負荷で最大下での能力を測りそれに対して各セットで負荷を設定することも可能ですが、ユース期の子どもでは安全性の問題がありそれは難しいといえます。それゆえ次に示す図を利用し、直感的に主観的な努力度を数値で答えてもらうことで、本当の彼らの客観的な努力度を捉えることが出来ます(図1)。例えば、10kgのトレーニングバーを利用しスクワットをした場合に、先程の図を示したボードを見せて7と答えた場合は、その子供は70%の努力度を発揮している(最大値の7割)と判断することが出来ます。この手法は自転車運動やランニングマシンでの主観的努力度を把握する方法を応用したものといえます。子どもでは慣れるまでは、誤差を示すこともあるかと思いますが、繰り返すことで個人の力発揮の度合いに対する感覚も優れていくものと考えられます。


エビデンスGolf(ユース編)


図1. 子供用の主観的努力度のスケール(文献2より引用)


繰り返しになりますが、レジスタンストレーニングを実施する際はトレーニング指導の資格を有する指導者のもとで、かつ機器を正しく設置した施設で行うべきといえます。また可動域や基本的動作に問題がある場合は、柔軟性の向上を第一に考えたレジスタンストレーニングマシン(Hogrel: http://crassic.com/plan/hogrel/)を利用することをおすすめしたい。それと同時にダンベルやシャフトを用いたレジスタンストレーニングに移行していくようにステップアップを目指したいものである。




参考文献
文献1)・Baechle Thomas R., Earle Roger W., 石井, 直方 (2010) NSCA 決定版 ストレングストレーニング & コンディショニング. ブックハウスHD:pp. 357-411.
文献2) ・Faigenbaum, A. D. (2007). State of the Art Reviews: Resistance Training for Children and Adolescents: Are There Health Outcomes?. American Journal of Lifestyle Medicine, 1(3), 190-200.




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